1.「OJT」ってなんだろう? |
■仕事の必須能力★『効果的なOJTの実施方法』(1)■
後輩、部下を導く働きかけすべてがOJT.
しかし、計画的であることが必要。
OJTを知っている人でも、実際にそれをきちんと実行できているかとなると、心もとない人が多い。
また、上司側と部下側との間でその認識が大きく分かれるという点も指摘できます。
さらには、OJTは、新入社員を迎え入れた1ヵ年の教育だけのことと認識している人も少なくありません。
また、何か特別な機会、場を設けてやるのがOJTだと決めこんで、そういうOJTは行っていないと考え込んでいる人もいます。
●OJTの目的(ねらい)は?
・主に仕事を通じて、その仕事の先輩が、後輩を
・計画的(指導内容、指導期間、達成レベルを設けて)に
・意図的(目的的接触、変容を促す働きかけ)に
・能力の伸長をはからせ、全人的成長を促す諸々の活動
・・・・・・がOJTということになります。
従って、日常の仕事を通して、そこに計画的、意図的アプローチが見られれば、それは立派なOJTです。
逆に、以上のことがないのは、OJTとしては十分ではありません。
部下を伸ばす、成長させるといった計画的、意図的な部分をもっと増幅させることで、仕事を軸とした諸々の活動に変化を余儀なくさせる、その変化促進がOJTなのです。
●意識改革とマインドの養成
まず、リーダーの意識変革が必要です。
部下を育てるのが仕事であり、責務であること。
部下との接触には必ず、計画的、意図的な内容を含ませること。
そして絶えず、部下の能力伸長、全人的成長を促す役割を担っている、という意識が必要です。
仕事を通しての部下との関係に、導き、育てる目と心を付加する、それが求められるOJTの心髄だということです。
OJTは、リーダーにとって大きな仕事、責務です。
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●OJT実行度のチェックリスト
1)部下に目標や方針を明確に示しているか?
2)日頃から十分なコミュニケーションをとるようにしているか?
3)報告や連絡はタイミングよく入ってくるか?
4)思い切った仕事の任せ方をしているか?
5)部下のよいところを上司にアピールしているか?
6)部下の指導などをよく上司と相談しているか?
7)部下の能力や特性を考えた仕事の与え方をしているか?
8)成果が出ていなくとも、労をねぎらい、努力を認めているか?
9)職場の問題について部下と話しあっているか?
10)部下に課題(テーマ)を与え、鍛えているか?
●OJTの成果は大きい
▼リーダーにとってのメリット
1)チームの戦力向上
2)適材適所の人材活用
3)キメ細やかな部下管理
4)有効な適性配置
5)ゆとりのある業務遂行
6)戦略企画の領域拡大
▼部下にとってのメリット
1)業績目標の明確化
2)発展的自己研鑚
3)革新的提案への意欲
4)役割分担の遂行
5)協力・協調の強化
6)相互負荷調整のチームづくり
▼組織全体としてのメリット
1)部下の成長・育成
2)業績向上
3)職場活性化
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●人材育成とOJT
OJTを正しく理解するために、「教育とは何か」について考えてみる。
1)日常業務遂行能力の向上
2)職場の人間関係のあり方
3)社会人としての心構えや常識を身につける
4)知識や技術の伝達
5)課題を与え、それに沿って指導する・・・・・など等
つまり教育とは、単に日常業務を効率的に行うための仕事に関係した知識や技術だけではなく、コミュニケーションやチームワーク、さらには1人1人の人間形成にまでつながっていることを再認識することが大切です。
さらに、「教育とは自分自身が生きていくための、自己更新過程そのものである」という言葉が、アメリカの教育哲学者、デューイにあります。
ここでは、教育が受身で語られていない点に注目できます。
教育とは自分自身が生きていくために、自分を取り巻く環境に対して、自らの手で働きかけていく過程にほかなりません。
企業でも、組織改革とか組織開発という言葉をよく使いますが、これは企業自身が生き延びるための自己更新活動そのものです。
そして、自己啓発こそが教育のゴールです。
この自己啓発を援助・支援するためのOJTが、企業内教育の中心に位置付けられ、人材育成の柱となります。
また、「教育」という漢字でも分かるとおり「教える」と「育てる」があります。
「教える」とは「何を教えるか」ということにつながり、「育てる」とは「どのような人材に育てるのか」となります。
ですから、この2つを日頃から意識していきましょう。
そもそも、組織が、人材をどのような人に育てたいのか、と考えているのか、という点が必要です。
「求められる人材像」というわけです。
●誰がOJTを行うのか
企業内教育は、企業が企業のために企業自身の手で行う教育であると定義できます。
企業自身が経済・産業社会に取り残されないため、あるいは埋没してしまわないために企業内教育は必要です。
企業内研修の目的
(1)この厳しい現実の中で企業が存続・発展していくため
(2)社員1人1人にとっては、職業人としての個人の将来を築くため
OJTなどは、会社が丸がかえの形で行われているために、それが個人のためであることが、とかく忘れがちであることに注意しなければならない。
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●企業内教育の3本柱
1)OJT
2)Off-JT
3)自己啓発
教育の最終ゴールは常に「自己啓発」と「自立」にあります。
つまり、OJTもOff-JTも自己啓発への援助行為であり、究極のゴールは自己啓発、すなわち自己教育の体制を確立することにあります。
「自己啓発」が究極のゴールで、OJTを企業内教育の基本に位置付け、これら2つのことを補完・補充していくためにOff-JTを実施していくことになります。
●組織の活性化とOJT
それでは、なぜ、OJTが企業内教育の中心と言われているのでしょうか。
第一に、職場で社員にいちばん影響を与えるのは、その上司であるという点です。
社員をとりまく環境には、上司、先輩、同僚といった人間関係のほかに、組織、仕組み、風土といった幅広いものがあります。
しかし、社員にとって最大の関心は、自分はいったい上司にどのように評価され、どのように処遇(昇進、昇格、異動など)されるかという点です。
したがって、企業内教育のさまざまな方式の中で、「上司」が部下に、というOJTが、最も効き目があります。
善いにつけ、悪いにつけ、職場で部下に最大の影響を与えるのは上司です。
部下のやる気や意欲に大きく影響しているのは、上司の何気ない行動や発言というわけです。
第二に、職場の問題はその職場の責任者である管理・監督者(上司)でないと、解決することが難しいことです。
OJTは何のために行うのかというと、この厳しい現実の中で企業が存続・発展していくためです。
そのためには職場で抱えている問題を、1つずつ解決していくことが条件となります。
職場の問題は、職場のリーダーであり、責任者である管理・監督者(上司)が、部下とともに解決していかなければなりません。
物事がスムーズに運んでいるときや円滑に推進しているときには、社内の他部門の人々も協力・援助してくれますが、いざ事がうまく運ば
なかったり、失敗すると、必ずそこにはセクショナリズム(なわばり意識)が発生します。
つまり、その職場の仕事の責任は、当然、その部署のリーダーにあり、部下と力を合わせて取り組んでいく以外にはありません。
まさに、OJTは組織の活性化そのものと言えます。
第三は、職場の実績や業績は、管理・監督者と部下の行った仕事の総和であり、部下の育成が管理・監督者の大きな役割であることです。
管理・監督者の仕事の特徴は、一口で言えば多面的であることですが、一般の担当者、すなわち部下との違いは、自ら進んで仕事の取り組んでいくことと、部下を通じて仕事を行っていくことです。
上司は自分自身で仕事をするのは当然ですが、それだけでなく、部下を通じて仕事をなしとげていかなければなりません。
そのためには、部下が知らないこと、できないこと、身につけなければならないことを、日常の仕事を遂行する過程で指導・育成していくことが必要です。
つまり、職場の仕事の実績や業績は、管理・監督者と部下が一体となって築きあげていかなければなりません。
このことからもOJTは組織の活性化につながっていきます。
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●再び、OJTは何のために行うのか
OJTの狙いを再確認します。
1つ目は、仕事ができること、つまり職場に与えられた仕事を効率的に達成していくことです。
2つ目は、職場のチームワークを保つこと、つまりコミュニケーションを促進し、職場のチームワークを高めていくことです。
3つ目は、個人の成長に結びつくこと、つまり従業員の1人1人の意欲・やる気を起こし、自己啓発を助けていくことです。
いわばOJTは、この3点を通して、組織の基盤を強化し、企業の存続・発展を可能にし、競争に生き残っていくために行うものだり、組織活性化そのものです。
このようにしてOJTを突き詰めていくと、いかにして部下に意欲・やる気を起こさせるか、ということになります。
部下の全員が意欲・やる気のある人間ではありませんし、中には能力を持ちながら、ふてくされている人もいます。
OJTが実りあるものにできるかどうかは、管理・監督者の姿勢に左右されます。
部下育成のための手法・技法としてOJTを受け止めるのではなく、人材育成のあり方についての思い(考え方、理念)として、OJTを理解することが必要です。
OJTは、職場に与えられた仕事を円滑に達成してこそ意味があります。
ここに組織の活性化とOJTとの結びつきがあります。
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●自己啓発への誘導
OJTは職場の各人の立場から、OJTとは何かについてとらえることが必要です。
人材育成は息の長い行為であり、もうこれでよいということはありません。
企業が存続する限り続く課題であり、OJTに終わりはありません。
企業や職場の中で異動や退職、転職などで、絶えず人が出入りしています。
また、企業をとりまく環境も常に変化しており、新しい要請が生まれます。
それにともなって日常業務の内容も刻々と変わっています。
これに対応していくためには、新しい組織や体制も、その都度整備していかなければならず、新しい能力開発の必要性も生じ、それにふさわしい人材が求められています。
OJTもこうした要請を担っていますが、なかなか上手に行われていないのが実情です。
OJT実践に当たっての阻害要因はいろいろありますが、その1つは経営者やトップがすぐにその成果を求めたがることです。
その結果、形骸化しやすい「チェックリスト」の作成などでお茶を濁したりします。
また、OJTがなかなか定着しない原因として、職場の各人が受身の立場でOJTを理解し、他人ごとと思っていることです。
OJTはリーダー、上司、管理・監督だけの問題ではなく、各人が自分自身の問題として受け止める基本姿勢を確立することが大切です。
どんなに周囲でOJTの重要性を叫んでみても、それが他人ごととして受け止められていたのでは、どんな制度・仕組みを作っても空回りしてしまいます。
OJTは自己啓発の場であるという認識と自覚が大切です。
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★効果的なOJT方法(2)へ続く |
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