■「できる人かできない人か」は他人が決めている |
●「コミュニケーション能力」とは何だろう?
とりあえず、ここでは「人間関係力」「交渉力」「説得力」をあげておこう。
この3つを学ぶことで、良好な人間関係が築けるだけでなく、あなたの人生の成功にも影響する。
アメリカのある経済誌で大企業の会長、社長、など1500人にインタビューした結果、「なぜ成功できたのか?」という問いに対して実に72%が「コミュニケーションに関する勉強が一番役立った」と答えたのである。
この結果は十分に考える必要がある。
「問題解決力」とか「経営手腕」とか「決断力」などではなく「コミュニケーション」なのだ。
実は私たちの人生は、かなりの部分「他人が決めている」。
「あなたの給料は誰が決めていますか?」
給料に限らない。
この担当モニターは好きだから、このモニターの治験を優先しよう、と治験責任医師が決める。
ここで大切なのは、あなたの能力はあなたが決めているのではない、という事実だ。(よく考えれば、当たり前だが、普段、つい忘れてしまう。)
つまり、「できる人」という評価もまた「他人」が行っているのだ。
「あのモニターはできるわね。」とCRCが言う。
だから「できる人と評価させること」が大切になってくる。
他人に「できる人」と思わせたら、あなたは本当に「できる人」なのだ。
そこで、他人との関係、コミュニケーションが大切になってくる。
実力が同等なら、間違いなく「他人の評価」の高い方が(あるいは好まれる方が)選ばれ、「できる人」と思われる。
もちろんコミュニケーション力だけではなく、他の能力や知識も必要だ。
でも、コミュニケーション能力が一番、大事だ。
これは外資系に勤めていると、よく分かる。
(「口がたつ人」「弁が立つ人」ほど、昇給・昇格する。)
★できる人=(能力)X(コミュニケーション能力)
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■世の中は「人間対人間」 |
「能力」はあるのだが、コミュニケーション能力が低く、他人と衝突ばかりしている人がいる。
あるいは、あの人は能力があるのに、表面から見えない、と言われる人もいる。
ここが大切なポイントだ。
能力があって、その上、コミュニケーションが上手である必要がある。
しょせん、世の中「人間対人間」なのだ。
では、コミュニケーション能力は誰でも持てるのだろうか?
もちろん、「YES」だ。
コミュニケーションに気をつけ、自分で意識して、訓練すれば誰でもコミュニケーション能力が向上する。
そのポイント、秘訣、コツさえ分ければ、誰でもコミュニケーション能力が身につく。
今乗っている車はトヨタ系列のディラーから買ったのだが、その決め手となったのは「あの担当者は頼れそうだ」と思ったことだ。
トヨタ系列のディラーなんてたくさん有るし、同じ車がほとんど同じ価格で売られている。
では、購入の決め手になるのは何か? それはセールスマンの好き嫌いだ。
社内でモノを頼むとき、あなたはどんな人に頼むろうか?
頼みやすい人、好きな人、だろう。
逆に「人に好かれる」ことをしていくと、向こうからあなたにコミュニケーションをとってきて、いい仕事を持ちかけてきてくれる。
仕事のチャンス、人生のチャンスをつかめるのが、「好かれる」というコミュニケーション術だ。
・好意
・好感
・好印象・・・・・・が大事なのだ。
●「人は事実ではなく、言葉に反応する」
私たちが知らないうちに日頃の人間関係を悪くしている、その元凶は「言葉」である(口は災いのもと)。
もちろん、良くしているのも「言葉」だ。
本人にその気がなくても、相手が嫌がることを言っていることも結構、ある。
たったひと言で、信頼関係を壊すことさえある。
大事なのは「事実」ではなく「言葉」なのだ。
さらに、みなさん、よくご存知のとおり「メラビアンの法則」というのがある。
私たちのコミュニケーションにおいて相手が印象に残るのは「話の内容・・・7%」「ボディーランゲージ・・・55%」という法則だ。
つまり人は「言葉」に反応するのだけれども、同時にその時の態度、言い方も工夫しておくことを忘れると、効果的でない、ということになる。
上手に話すことができなくても、上手にコミュニケーションをとることは可能だ。
アナウンサーのように流暢に話す必要などないのである。
ひと言、ひと言に愛情を持って口にした時に、それは自らの態度や言い方にでるものだ。
この点をおろそかにしてはいけない。
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■上手な話し方のコツ・会話の秘訣 |
波長の合う人とか、うまが合う人やペースが合う人がいる。
こんな人とはコミュニケーションがうまくとれる。
そこで、相手のペースに合わせる、というコツがある。
これを「ペーシング」と呼んでいる。
たとえば、「相手の言った言葉」をこちらも使う。
「今日は寒いですね。」
「そうですね。寒いですね。いったい何度なでしょう?」
というように。
ほかにも早口の人には、こちらも早口になってみる。
専門用語は極力、使わない。
あるいは逆に、相手が使う専門用語をこちらも使う。
声が大きい人には大きめの声で、小さい声の人には小さめで話してみる。
さらにコミュニケーション密度を高めるために「ペーシング + アルファ」を利用する。
たとえば・・・・
「寒いですね。」
「本当に寒いですね。今年はスキーに行きましたか?」
・・・というように。
単語を相手に合わさせるとともに、それにもうひと言をつけ加える。
そのプラスアルファは、疑問形にすると会話がはずむ。
「会議が多いね。」
「本当に我が社は会議が多いですね。午後も会議ですか?」
ちょっとしたコツでコミュニケーションがうまくいく。
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■ここまでのまとめ |
1)「できる人」と決めるのは他人である。
2)人に好かれたほうがいい
3)人は事実よりも言葉に反応する
4)コミュニケーションを壊すクセがないか、チェックする
5)相手のペースに合わせる「ペーシング」が有効なスキルだ |
■「相手のYES」を引き出そう |
人間は、「イエス」と言うと体も変化するということが分かっている。
たとえば、こぶしを握る、腕組みをする、しかめっ面をする、というのは「ノー」のボディランゲージだ。
逆に、うなずく、身を乗り出す、笑顔になる、手を開く、うなずく、というのは「イエス」のボディランゲージだ。
つまり、相手に「イエス」のボディランゲージを取らせると、考え方もイエス、肯定的になる。
こんな実験がある。
バスケットボールを弾ませるシーンをCMに入れる。
すると、視聴者はボールの動きを目で追うことになり、それは縦に弾む、つまり「うなずき」のボディランゲージになる。
そのあとで、商品の説明をすると、うなずきで既に「受入れ態勢」になっているために、言うことがスムーズに受け止められて、結果、「商品が売れる」というものだ。
一種の「サブリミナル効果」になるため、禁止になったそうだ。
それだけ、効果があるわけだ。
交渉の時にも、まず「小さなこと」でイエスという答えを引き出しておいて、さらに「タフな項目」を伝え、イエスと言わせるという手法もある。
たとえば、モニターが治験責任医師を訪問したとしよう。
モニター「先生、今日は外来でしたか?」(当然、イエスの答えが返ってくるだろう質問をする)
医師「ああ、そうだよ。」
モニター「インフルエンザが流行ってきましたね。」
医師「そうだね。」
モニター「ところで、先日、症例報告書の作成の依頼をしましたが・・・・」
医師「そうだったね。」
モニター「その確認及びSDVを来週、実施したいのですが可能でしょうか。無理なら再来週でもいいのですが・・・・・。」
というように、イエスの連続を行った上で、あなたの提案を代替案も含めて提示していく。
小さなイエスを積み重ねて、やがて大きなイエスを引き出す。
これが交渉のポイントだ。
このようにして、徐々に人間関係を築いていこう。 |
■人生は「説得」「交渉」の連続 |
私たちの人生は、説得と交渉の連続だと言ってよい。
小さな頃は・・・・
子ども「あのテレビゲームが欲しい」
母親「だめよ。ゲームばかりして、勉強しないんだから。」
子ども「あれを買ってくれたら、明日から勉強を毎日1時間するからさ・・・・。」
・・・というように。
あるいは・・・
モニター「再来週、SDVをしたいんですが・・・・」
医師「いや、学会が近くて忙しいだんだ。」
モニター「そうですか・・・。いつなら可能でしょうか?」
医師「来月ならいいと思うよ。」
モニター「来月ですと、ちょっと締切に間に合わなくて。3週間後ならいかがでしょうか?」
・・・というように。
社外だけでなく、上司や同僚、部下とも同じように毎日、交渉が続く。
「仕事のできる人」はビジネスの交渉だけでなく、日頃の話し合いも上手に話をつけていく。
「おとしどころ」を見つけるのがうまい。
(「おとしごろ」ではなく、あくまでも「おとしどころ」だ。間違わないように。)
優秀なモニターは「では、夜勤のときに症例報告書を作成しましせんか?私も書き方などでご相談にのります。」というように、別の選択肢を出したりする。
●説得しようとしてはいけない
さらに、本当に仕事のできる人というのは、無理に説得しようとはしない。
こちらの主張を何とか分からせて行動させようとする説得は、もう一歩進めて「納得」にまでもっていきたいところだ。
相手が自発的に、あなたの望むように動いてくれるようになると、最高だ。
●全ての交渉は継続することを忘れない
たとえ「1回限り」の交渉と思われたとしても、そこであまりに強引にやり込めたり、交渉態度を悪くしたりすると、結局は「悪評」が業界に知れわたってしまう。
「悪事千里を走る」と言うぐらいだし、このネット時代では、一瞬にして世界を駆け回ってしまう。
モニターの仕事であっても、継続していくわけだし、治験責任医師やCRCの方とも長いつきあいになるはず。
だからこそ、交渉などはスムーズにやっていきたい。
●説得力を身につける方法
相手を説得した上で、さらに心から納得してもらうことがコミュニケーションの大きな目的である。
まず、納得してもらう手始めは、あなた自身が相手を説得するだけのスキルを身につけておくことが必要だ。
そうでないと「納得以前」にわかってもらえない。
そもそも理解できないとともなりかねない。
そこで、どのようにして説得力を身につけるか、具体的な「スキル」だが、大きく分けると話は「内容」と「伝え方」を分けられる。
構成と伝え方、デリバリーの2つを兼ね備えると、説得力が格段に増してくる。
●時間がないときの説得方法
時間がない時、急に上司から「ちょっと、これ頼むよ」といったスピーチやプレゼン、朝礼などで使えるスキルだ。
次の手順を見てほしい。
1)ポイント、結論をまず示す
2)理由を言う
3)具体例・実例をあげる
4)ポイント、主張を繰り返す
ここで説得力を増すためには、是非、「具体例・実例」を適切にあげることだ。
何故なら、「空論」ではないことを伝えることができるからだ。
これで、説得力がグット増す。
●時間があるときの説得方法
1)全体像を示す(Summary)
2)詳細を示す(Details)
3)再び、全体像を示す(Summary)
ここでは「同じことを形を変えて、二度言う」ことになる。
また、はじめのサマリーは「結論」ということでもある。
ニュース番組で言うなら「まずはじめに主な今日のニュース項目です」と見せる。
そして、ニュースの本体である「詳細」を話す。
最後に、もう一回「これが今日の主なニュースでした」となる。
●1)全体像を示す(Summary)
ここでは、ポイントを絞り込んで、3つ程度にまとめると分かりやすい。
「今日のポイントは 1)選択基準 2)CRFの記載方法 3)治験の終了時期 の3つです。」
●2)詳細を示す(Details)
ここでは、そのポイントについて、詳しいデータ、詳細を示す。
●3)再び、全体像を示す(Summary)
ここでは、すでに全体部分で詳しく理由づけをしているので、数字なども詳しく入れても構わない。
●説得するときの「話法」とは
説得する時の「内容」は以上だが、「話法」としては次の3つを実行しよう。
1)断定的な表現を使う(ここは日本人は苦手だが、是非、断定しよう。)
2)短文主義でいく(短い文章の連続にする)
3)発声にメリハリをつける
●1)断定的な表現を使う
自信のある人にはついていくものだ。
自信の無い人の表現の仕方としては「思います」「考えます」で終わっている。
「治験の促進には治験責任医師の関わり方が重要だと思います。」
↓
「治験の促進には治験責任医師の関わり方が絶対に重要です。」
そのようにあなたが思っていること、考えていることは分かっているので、いちいち、そのようなことを言わなくてもいい。
●2)短文主義でいく
これはビジネス文書でも同じことが言えるのだが、できるだけ短い文章を使う。
逆にダラダラと長い文章の切れ目のないスピーチをすると、「自信がない」「言い訳がましい」と思われる。
プレゼンの時にはそのセンテンスを言っている間は、アイコンタクトをひとりから外さないようにする。
●3)発声にメリハリをつける
一本調子になると、眠くなる、興味が失せる、どこがポイントか分からない、という短所がある。
ずっと、大声でもいけない。
ここぞ、という時に声をあげる。
でも、まぁ、一般的に日本人は「声が小さすぎる」ので、あなたの思っている「丁度よさの声量」の3倍を目指すといい。
それぐらいで、丁度いいはずだ。
●「間」も重要
「間」も大事だ。
ダラダラもだめだし、一気加勢でも分かり難い。
大事なポイントを言う前や、言ったあとに、ちょっとした間を置く。
ここがプロとアマの違いで一番大きいところだ。
落語の名人と若手の差は「間」にある。
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■ここまでのまとめ |
1)人生は説得と交渉の連続だ
2)はじめに小さなイエスを言ってもらう
3)説得するときの流れを知ろう
4)説得するときは「断定」する
5)話法に注意する(声のトーンや短文で、など) |
■参考図書
『「できる人」の話し方&コミュニケーション術 なぜか、「他人に評価される人」の技術と習慣』箱田 忠昭 (著)
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