2.思案の罠 |
セルフコーチングを阻害する5つの代表的な5つの代表的なパターンがあります。
これらを「思案の罠」と呼び、それぞれ「〜回路」と呼んでいます。
ひとりで考えていると、こうした回路にはまることはよくあることです。
しかも、入るまい、入るまい、と思うと、かえってそこにずっぽりはまってしまいます。
では、どうしたらよいかと言うと、セルフコーチングをやっている時に「あ、〜回路に入ったな」と気づいたら、その回路に、はまった自分を上空から見下ろすようなイメージを脳裏に描き、そこから出てくる状況を映像化することです。
こうした回路に絶対に入らない人などめったにいませんから、時々、入ることは覚悟した上で、「入ったこと」に気づいたら、速やかに抜け出して、次の建設的な質問を自分に問うことが大切です。
主な「回路」として次の5つがあげられます。
(1) なぜなぜ回路
「どうして、こんなことになってしまったんだろう?」
「なんで僕ばかり、こういう目に遭うんだ?」
「なぜ、私には彼女のような能力がないのかしら?」
などというように、自分に対して「なぜ、どうして」と問いを発すると、だいたい、暗い気持ちになっていきます。
しかし、こうした問いには答えがありません。仮に「それがあなたの運命です」と宣告されたところで、何の救いにもなりません。
むしろ、自分の置かれた状況を前向きに受け止めることが大切です。
「今は、こういう状態なのだ」と冷静に受け止めて、状況を客観的に分析し、プラス材料を探していくほうが、よほど建設的です。
(2) ぐちぐち回路
「どうせ、いつもあたしが貧乏くじをひくことになっているのよ」
「あいつに指導しても、時間の無駄だよな」
「こんな目標、絶対に達成できるわけないよ」
何か望ましくない状況があった時に、誰かのせいにして、その人を責めるパターンです。他人の責任にすることにより、自分を無意識のうちに正当化しようとする回路と言ってもよいでしょう。
このような愚痴をこぼしていると、多少は気分がすっきりする場合もありますが、だいたいは自己信頼のレベルが下がり、無力感が募っていくものです。
「ぐちぐち回路」にはまったと感じたときには、「今、自分にできること」を探すのが、脱出のきっかけになるでしょう。
(3) 心配回路
「このままの状態が続いたら、この会社はどうなるのだろう?」
「このプロジェクトはうまくいくだろうか?」
「自分にはこんな重い責任果たせないかもしれない」
このような発言や思考の背景には、不確実性に対する不安が見えかくれしてます。
未来を完全に予測することは不可能ですから、必ず、ある程度の不確実性が伴うことは、しかたないとあきらめることが大切です。
「あきらめる」という言葉消極的に聞こえる方は、「諦観を持つ」「達観する」と言い換えてもいいでしょう。
「失敗したらどうなるだろう?」という心配な気持ちが湧き上がった時に、「最悪の事態を考える」という方法もあります。「起こりうる最悪のシナリオ」を考えて、それよりきっとベターだという覚悟を持つことで、いい意味で開き直れる場合もあるでしょう。
極端な例をあげると・・・
「もし、この契約が取れなくても、クビにはならないだろう」
「たとえ会社が潰れても、失業保険で生活することは可能だ」
といった形で、心の準備をしておくと、気持ちが楽になる場合もあります。
(4) 憶測回路
「部長は私に対してあまり期待していないのではないかしら?」
「最近、彼がよそよそしいのは、この職場のやり方になじめないからだ」
他人の心の中のことを正確に把握することはできません。
当て推量、憶測は当たっている場合もあるでしょうが、誤解、勘違い、間違った先入観であるかもしれません。
不確かな推測に基づいて、戦略や行動計画を立てるのは、とても危険です。
ですから、セルフコーチングの中で「憶測回路」にはまったと感じたら、いったん立ち止まることです。
そして「現時点で事実として把握していること」と「推測していること」を分けてください。
その上で、「より的確な情報を得るためにはどうしたらいいだろうか?」を考えて、必要な判断材料を収集する方法を検討するのが建設的です。
(5) 散漫回路
集中力が持続する長さは、人により長短がありますが、ひとつのことを長時間考え続けるのは難しいことです。「気が散る」というのは、誰にとってもよくある話ですね。
そんな時には、「セルフコーチング、セルフコーチング」と声に出してから、おもむろに次の質問を自分に向けて発してみましょう。
周囲の人や環境がどうしても気になる場合には、場所を変えるのも1つの方法です。
|
|
3.二つの思考パターン |
描いたビジョンに向かって、確実に行動の変化を起こすには、日常の脳の自己対話をプラスのものへと変換していくことが必要です。
つまり、ある出来事に直面した時、感情をともなって反射的に起こる脳の思考回路をプラス志向に変える必要があります。
1つの出来事でもどうとらえるかで、結果は大きく違ってきます。
事例1)
「顧客からクレームがきた。」
このことを前向きにとらえるか、否定的にとらえるかで、その後の行動は大きく変化します。
「クレームはチャンス」とポジティブに認識できれば、がんばろうという気持ちが湧き上がります。
他方「私は悪くないのに」などと、ネガティブなとらえかたをすると、身体の中では、ストレスを受けたと感じて、かたくなな反応が生じます。
心の中でも「こんな仕事もういや」という気持ちになるかもしれません。
事例2)
上司に呼び出され「悪いが今週中にこの仕事を仕上げておいてくれ」と言われました。明らかに実力以上の難しい仕事です。
上司の言葉を聞いた瞬間に、あなたの中で反射的に起こる解釈はどのようなものでしょうか?
● プラスの思考パターンの解釈
「チャンスだ。上司から信頼されて、この仕事を任されたに違いない」
● マイナス思考のパターン解釈
「いつも、厄介な仕事を部下に押し付けてくる自分勝手な上司だ」
●現実は意識がつくるもの
「現実は我々の意識が作り出す」もので、「客観的な状況というものが存在するわけではなく、状況をどう認識するかが、その人にとっての現実である」という考え方がある。
これによれば、一人ひとりの物事に対する反射的な解釈を変えることで、環境が変わり、自分の望む現実を創り上げることができるのです。
ほとんど手をつけていない原稿の締め切りが、三日後に迫っているとします。
あなたはどのような現実をとれえますか?
「あと締め切りまで3日しかない。」
「大丈夫、締め切りまであと3日もある。」
ある出来事に対する自分の反射的な捉え方を見直してみましょう。
● どんな瞬間に自分の反射的なマイナスの思考パターンがスタートしますか?
● その時の事実・事象と自分が勝手につけた解釈を分離してみましょう。
● 意識的に、マイナスからプラス思考パターンを転換させましょう。
|
セルフコーチングのアプローチ方法 |
セルフコーチングでは、自分自身の問いかけにより、目標を定めていきますが、考えているだけでなく、実際に行動に移すところに力を入れる必要があります。
また、常にセルフモチベーションを高めながら、習慣へと定着させていかなければなりません。
そのためには、まず、自分の意志を深く確認するところからスタートすることが大切です |
1.Will 志を立てる |
セルフコーチングの最初のステップは、目標を実現したいという思い、自らの目標達成への意志を徹底的に確認することです。
つまり「なぜ自分はそれをやろうとするのか」「何のために自分はその目標を必要とするのか」を考え抜くのです。
この意志の確認を、最初にしっかり行っておかないと、この後のステップの全てが中途半端なものになってしまいます。
明確な意志を持ってスタートすることが、何事もやり遂げる基礎となるのです。
強い意志を持つためには「意味」を感じることが大切です。
「なぜ、その目標に取り組むのか」といった「そもそも」の意味を確認することが必要と言えるでしょう。
「目標をなんとしても達成したい」という心理状態へと変化させるためには、次の3つの問いかけをするとよいでしょう。
@ 達成することは、あなた自身は、どんな意味を見出していますか?
A 達成することは、周りの人々にとってどんな意味があるのですか?
B 達成することは、社会にとってどんな意味・価値があるのですか? |
そして、その際に自分の心の声を聞き届けることです。「腑に落ちる」という表現がありますが、心の底から「よし、やるぞ!」という「想い」が湧いてくるかどうかを確認する時間を持ちたいものです。
|
2.Image 成功のイメージを描く |
イメージトレーニングは、ごく限られた特別な人のためのものではありません。
ビジョンを描く力は、すべての人に、本来的に備わっています。
そして、イメージを鮮明に描いて、意を決し、ゴールに向かって行動を起こした人だけが、夢を達成し、自分が望む人生を手に入れることができるのです。
成功のイメージは具体的なだけでなく、適切なレベルで思い描くことが大切です。
高すぎれば実現できない「絵に描いた餅」になってしまいますし、あまりにも簡単に実現できることであれば、チャレンジしがいがありません。
まずは、鮮明な成功イメージを描く際に、達成したい目標のレベルをちょうど良い水準に確定すること、そして、周辺にも意識を向けることが大切です。
このような成功イメージを、自分だけでなく、周囲の人にとって、社会にとって、というように様々な視点で描くのです。
そして心から「この成功が欲しい」と思えるように、具体的にイメージしていくのです。
|
3.Source エネルギー源を探す |
目標達成のために、志を立て、成功のイメージを持ち、具体的な行動計画を策定することが必要なのですが、それだけでは、最後までやりとげるパワー、エネルギー源が無ければ、失速してしまいます。
そのためには、過去の自分を振り返り、達成できたこと、うまくいったことを思い起こし、自分の内側にある「強み」を再確認することが役に立ちます。
そして、新しいアクションを起こすためのポジティブなエネルギーに満ちた状態を獲得するのです。
目標を達成できる人は、目標設定の段階で、過去の成功体験を思い描き、「今回は、どうやって達成しよう」「自分の努力によって、今回も絶対にこの目標を達成しよう」というように、「できる」というエネルギーで目標をとらえます。「勝ち癖」のパターンですね。
他方、目標を達成できない人は、「どうせ今回も無理だろう」と、あきらめの気持ちがあるのです。
過去の辛かった体験、できなかった経験が想起され、「まぁ、今回もできなくてもしかたないか」という消極的なスタンスになります。
気合の入らない計画を立案してしまうので、再び「負け癖」のパターンに陥ってしまいます。
エネルギーの源泉を獲得するためには、自分のこれまでの人生で「できた」「成功した」「やりとげた」「強みを発揮した」場面の数々、経験に基づく源を発掘するのが効果的です。
こうした体験を、記憶の片隅から掘り起こしながら、「なぜ、それができたのか」という自分の「強み」を言葉にしてみましょう。
●「強み」を表す言葉
たとえば、学生時代にクラブ活動で一日も休まず早朝練習をがんばった、というような体験があれば「忍耐力」「持久力」といった強みを見つけることができます。
また、新入社員の頃、厳しい上司のもと、高い目標を与えられて、奇抜なアイディアで乗り切ったという経験があるならば、「創造力」「独創性」「プレッシャーに強い」といったソースの発見につながるでしょう。
このような成功体験を思い出すと、元気が自分自身の内側から湧き上がってくるものです。
つまり、自分自身の体験が、川の源流の泉のように、エネルギーを生み出す源になっていることを確認するのです。
「過去の成功体験」と言っても、おおげさに考える必要はありません。
ごく個人的な体験でも、自分の強みが発揮され、自己成長において大きな意味があったとすれば、それこそが自己の源になるのです。
些細な出来事や日常的な風景からイメージすることも効果的です。
自分自身の人生を振り返り、うれしかった経験も苦しかった体験も、すべてソースとして棚卸することで、強みを再確認し、根拠のある自信を持つことができるのです。
そして、次に、獲得したエネルギー源をもとに、達成できる自分の姿を鮮明に描くことです。
つまり、自分の強みを活かして、生き生きと仕事をしている自分、ゴールを達成できた自分の姿を描きます。
たとえば、「私には部活で培った集中力とリーダーシップがあるから、きっと今回のプロジェクトも一ヶ月前倒しで達成できる」といった成功のイメージです。
これは、第二ステップのImageにもつながりますが、自分の強みに基づき、エネルギーレベルも高くなっていますから、より鮮明で、すぐ行動につなげられる具体的なイメージになっていることでしょう。
|
★前のセルフコーチング前半を読む/★次ぎのセルフコーチングを読む |